殺風景なベランダを眺めているうちに、ふと、ベランダ菜園でもするか、という考えがポッと浮かんだ。こうなると私の行動は早い。
地下鉄一駅離れた種苗屋に行き、大葉とパセリの苗を買う。食べて美味しいから、という理由もあるが、何よりも優先するのは育てやすさ。あっという間に枯れてしまうのが一番辛い。
寄り道もせずにサクッと帰り、植木鉢に植え替える。何度も植えては枯らしているので、植木鉢も土も、スコップも砂ふるいも、道具はすべて揃っている。
ついでに冷蔵庫からネギを出して根っこを切り取り、植木鉢の余白に差し込んでおく。これで３品。いい感じだ。
草系はいい。すぐにスクスク育つから。これからどんどん暖かくなるから、もっとスクスク伸びるだろう。そうなると嬉しいから、水や肥料をどんどんやりたくなる。調子に乗るなよ、私。と言い聞かせつつ、葉っぱをいじる。
そういやこの前、NHKかでパセリ料理やっていたな。なんか、大量のパセリを豚肉で巻いて、甘辛く焼いたやつ。あれを作ろう。夢が膨らむ。
学生の頃、居酒屋の皿に添えられたパセリを食べるかどうかで、クラブの同級生と言い合いしたっけ。今まで忘れていたのに、フワッと記憶の上の方に昇ってきた。
私の頭の中には、忘れたつもりの記憶がいっぱい詰まっているのだろう。この先何かのきっかけでどこかのボタンが押された時、フワッフワッとどんな記憶が昇ってくるのか、くじ引きみたいな気分で愉しみにしている。そう思えば、いったん忘れるというのも悪いことじゃないかもしれない。
