確か、小学校の図書館の隅の本棚に江戸川乱歩の少年探偵団のシリーズ本が並んでいたことが、推理小説との出会いだった。それからいろんな推理小説を読んだ。
若い頃特に好きだったのが、シャーロック・ホームズとアルセーヌ・ルパン。ルパンのセリフにはフランス語のルビが所々にふってあって、「おはよう」がフランス語で「ボンジュール」ということをルパンで知った。大学の第2外国語にフランス語を選択したのは、ルパンを原書で読みたい、というミーハーな理由ゆえ。周りには「カミュを原書で読みたい」というツワモノがたくさんいたけどね。
アガサ・クリスティーはポワロからはまった。トミーとタペンスやミス・パープルには目もくれず、ハヤカワ文庫のポワロものに夢中になった。ポワロもフランス語を話すので、どんどんフランスが好きになっていく。
それからヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスもの、エラリー・クイーンの国名シリーズ、ドロシー・セイヤーズに移行していく。裕福で知的で皮肉屋の名探偵たち。定職に就かず、美術品を鑑賞したり社交したりという日々の暮らしを読んだことが、今、早期退職したいと思うことにつながっているような気がする。退職後に「する事がなくて時間が余る」と絶対言いたくないのは、ファイロ・ヴァンスやピーター卿みたいに有閑生活を楽しみたいから。
好きな作家はもうすでに亡くなっているので、どんなに大切に少しずつ読んでも、いつかは読み終わってしまう。どんどん他の作家を探し、ディヴァインやウィングフィールド、マーティン・ウォーカーに手を延ばす。
思うに、名探偵の好みは、年齢と共に変わってきて、今はホームズやルパンのような天才肌のはあまり読まなくなった。すぐに解決してしまうでしょう?そうじゃなくて、調査をコツコツ積み上げていく、クロフツのフレンチ警部に共感できる。クリスティーでも、ポワロもいいけどミス・マープルが魅力的。
となると、今まであまり面白さを感じなかった、ディクスン・カーや、クイーンの国名以外の作も、もう数年経ったら惹かれるのかもしれない。それまで、フレンチ警部とミス・マープルと共に待っていよう。